Cimpress社 CEO Robert Keane氏に今後について聞いてみた!(WhatTheyThink?)

Vistaprintは長年に渡って、「市場の選択と集中」及び「自動化」の戦略が印刷業界にもたらした成功例として語られてきた。その親会社であるCimpress社は、将来の成長を加速するための二つの重要な戦略をもって、新たな段階に登ろうとしている。彼の戦略と視点は極めて興味深い。

Vistaprint(Webテンプレートで制作して印刷) 対 完全データアップロード印刷

WhatTheyThink(以下WTT): ロバートさん、今回のWIRmachenDRUCK社の買収は非常に興味深いですね。WebToPrintの提供会社は他にも多くありましたが、なぜここだったのでしょうか?

Robert Keane(以下RK): 我々はこの18ヶ月に幾つかの会社を買収しているが、その中で大きかったのが、ドイツのWIRmachenDRUCK社とフランスのExaprint社の二社だ。 二社で優に120億円以上の売上をあげており、そのほとんどを150社以上の生産パートナーのネットワークに外注している。この二社は激しく競合し、生産パートナーのネットワークを築き上げることで、欧州のWebToPrint市場を勝ち抜いてきた。これは我々の将来のビジョンと合致するものだ。18ヶ月前に発表したように、我々は、多くの印刷会社を支援するバックエンドのサプライチェーンと、同じく多くの印刷再販業者、その他の顧客への販売窓口をつなぐ生態系としてのソフトウェアシステムを開発している。一部のバックエンドとフロントエンドは我社が所有することになるが、大多数はそうならない。

WTT: これは御社がVistaprintの生産能力を構築するにあたって行ってきた投資を考えると、非常に興味深い戦略です。 これまでの生産拠点に、新しい仕事を持ち込む計画ですか?

RK: 実際には、その逆になる。我々の今後もっとも成長するビジネスは、チラシ、葉書、名刺といった既に15年前からWebToPrintに組み込まれている定形の標準化された以外のものがもたらすだろう。勿論それらは我々の重要なビジネスでありつづけるが、完全データアップロードによる印刷によって可能となる、その他製品のマスカスタマイゼーション化の市場の方がより大きな成長をもたらすと思う。

WTT: もっと詳しく説明していただけないでしょうか。

RK: マスカスタマイゼーションの初期の製品は、Webのテンプレートを使って顧客が自分自身で編集できるようなどちらかというと標準的な単純なものであった。16ページの標準的なA4冊子に折ページを差し込むとか、顧客が楕円形を望むとか、もっと複雑な仕様となると、マスカスタマイゼーションは未だに本格化されていない。仕様の複雑さがゆえに、標準化されたWeb To Printの対象から除外され、その結果マスカスタマイゼーションとは相容れないものになってしまうからだ。しかし、我が社は、生産者側と再販者側両方を網羅した巨大な生態系プラットフォームを構築することにより、それを変えることができると信じている。

WTT: 最近の決算報告会で、マスカスタマイゼーションとは「パーソナルレベルまで対応したカスタマイズされた製品の小口注文を、マスプロダクションの信頼性、品質とコストで製造すること」と定義されていますが、ご説明いただけますか?

WTT: もっと詳しく説明していただけないでしょうか。

RK: これまでのカスタマイズの市場は、それぞれの個々のジョブが、見積もりや入札を経て、機械が生産準備に入り、個別に配送されるものだと考えられていた。だから、製造工程のあらゆるステップがカスタム化されざるをえなかった。 オーダーが大量生産であったため、カスタム化された工程の高価なセットアップコストはさほど問題視されてこなかったのだ。歯磨き、携帯電話、自動車部品等、大量生産される製品のセットアップコストが全体の中では僅少となる考えと同じである。しかし小ロットで生産されるカスタム製品となると、セットアップコストを少量のなかで償還させないといけないので、固定費が嵩んでしまう。だから既にご存知のように5,000枚のオフセットのカタログを印刷するときに、セットアップコストが大半を占めているので、ほんの少しの印刷機の時間配分を追加するだけで10,000枚に増やしても殆ど同じこ価格で印刷することができてしまう。マスカスタマイゼーションは、カスタマイズされた製品を、大ロットではなく、それぞれのオーダーが極小ロットでも、現実的なコストで提供する方法なのだ。

WTT: 例をあげてもらいますか?

RK: マグカップ、名刺、チラシ、フォトブックといった、多くの顧客が共有する標準的なフォーマットで生産できるものは、自動化システムが大量の生産を可能とするので、マスカスタマイゼーションが実現しやすい。昨年Vistaprintでは、1800万オーダーを処理し、それぞれのオーダーの平均注文点数は平均2種類以上であった。これは製品を約5000万回セットアップしたことに相当する。このような超巨大な量をこなすには、垂直統合と自動化が最も適している。しかし将来を考えるに、マスカスタマイゼーションはロングテールの少量製品にも及んでいくであろう。例えばレストランのロゴの形で楕円になっているテーブルマットを考えてみよう。このような製品は、これまでは純粋なカスタム製品であった。しかしインターネット上に存在するバラバラな生産拠点を、巨大な顧客ベースとのチャネルと結びつけることにより、単に長方形の製品や、標準化されたマグカップだけでなく、これらのロングテール製品もマスカスタマイゼーションとして扱うことができるのだ。

WTT: Vistaprintの市場活動を顧客のセグメントで分けると、これまでのターゲットは、個人経営事業が中心であったが、これからは完全データアップロードプリントが主流になっていくと仰る。 「これまで」と「これから」の市場の違いを詳しく教えてください。

RK: 典型的なVistaprintの顧客は、CMYKとかトンボといったような簡単な印刷用語もわからない客が多い。だからVistaprintのユーザー体験は、印刷の経験がない人向けになっている。対照的に完成データアップロード&プリントは印刷のプロフェッショナル、デザイナー、ブローカー等、DTPとジョブの背後にある技術関係を理解している人々を対象としている。 両方の顧客ともマスカスタマイゼーションの顧客となりうる。VistaprintやShutterflyといったテンプレートを軸としたプロバイダは、マスカスタマイゼーションの初期の代表格といえよう。これらは、デザイン工程を標準化するによって、繰り返される生産の自動化を可能とする。だが、標準化されていない複雑な形態となると熟練したプロがどうしても必要となってくる。標準化されていないより高度なマスカスタマイゼーションを、印刷技術をもっている人々に提供するにあたっては、DTPを理解していない人向けの〝日曜大工”的なものでは用を達することはできない。プロが持っているクリエイティブな能力を引き出せるようにしなければならないからだ。これらのクリエイティブな能力が、単一のネットワーク上で大量の注文を発生させ、電子的に統合された生産側のワークフローによって、前工程、印刷、後工程がデジタル化される、何十万という規模での数限りない異なった製品形態をマスカスタマイゼーションすることができるのだ。 必要十分な仕事量と、洗練されたソフトウェアがあれば、特種な仕様の製品であっても、同種のものを自動的に寄せ集めて、その製品の製造を得意とする印刷会社に集中的に流し込むことができる。データの流れを体系的に構築し、製造プロセスをデジタル化すれば、セットアップコストは実質的にゼロとなる。 だから、完全データアップロード&プリントのビジネスモデルは、テンプレート依存形では成し得なかったロングテール製品への対応を可能とするのだ。

WTT: さきほど完全データアップロードプリントが、今後最も速く成長するとおっしゃいました。Vistaprintの2016年1Qの数字を見ると会社全体の成長率は8%ですが、その中でアップロード&プリントは31%の成長となっています。随分と差がありますね。


RK: 完全データアップロードプリントの高い成長はここ12ヶ月で行った企業買収によるもので、全てが有機的成長とは言えない。しかし、企業買収を差し引いても我々の新規事業分野が全体より速く成長していることは確かだ。この四半期ではCimpressの成長は昨年比13%で376M$=約450億円となる。為替レートの変動を差し引くと21%の成長となる。Vistaprintは全体の71%を占めており、アップロード&プリントがその20%、残りはその他ビジネスである。完全データアップロードプリントは全体の中ではまだ小さいが、高い成長率を継続して達成していけば、徐々にその比率を高めていき、柱の事業となるであろう。

WTT: 貴社の生産環境は最近どうですか?デジタル印刷に大きな投資をされたと理解しています。

RK: 元々はVistaprintのために構築したソフトウェアと生産設備は、現在ではそれ以外にFedEx OfficeやStaples、Amazon、その他の小規模再販業者など、多くのアプリケーションをサポートするようになった。元々発展させてきた生産設備に、昨今の買収で獲得した生産、外注能力を加え、現在では小森、Manroland、Heidelbergといった幅広いオフセットの設備とデジタル印刷設備を多数保有している。また、HPとXeroxの大口顧客であり、HP、Durst、その他のあらゆるワイドフォーマット機に加えて、テキスタイルのプリント設備も保有していて、印刷機材の国際連合のようだ。ネットワーク戦略にそって、Cimpressは多くの下請けパートナーと契約しており、取り扱い製品の数を激増させた。我々が保有していない特定の設備を他社が保有しているならば、それをマスカスタマイゼーションプラットフォーム上の下請けパートナーとして利用できる。一社で全ての設備を保有することはできない。素晴らしい技術革新は日進月歩で、多岐にわたるため、全てを追随するのも容易ではない。ネットワーク戦略は複数のパートナーによる補完関係をつくることができるので、これらの課題を解決してくれるだろう。


WTT: Staplesとの関係が曲折しているようですが、同時にAmazonとは非常に興味深いことをなさっているようですね

RK: StaplesとFedEx Officesとは、長年素晴らしい関係を築いた尊敬しているパートナーだ。しかし現在ではAmazonとのビジネス機会が大きな可能性があると感じている。現在はまだテスト中だが、AmazonはAmazon級のグローバルなプラットフォームを提供できるパートナーを探していた。StapleもAmazonも独占契約ではない。理想的には両方をパートナーとしたいと思っている。 Amazonは動きが早い。対顧客のユーザー体験の部分はアマゾン自身で設計し、バックエンドの部分はCimpressのマスカスタマイゼーションプラットフォームに委ねている。アマゾンがフロントエンドに立てば、我々はより大きなスケールを確保できるだろう。何十万、何百万という可能な限り大量な注文を我が社のネットワークを通じて確保することは必須だ。それができない限り、マスカスタマイゼーションプラットフォームの構想は現実的なものとならなく、成り立っていかない。

WTT: 3Dプリントはいかがでしょうか? 自然な事業拡張に思えますが。

RK: 着目しているが、現在では特に計画はない。現在は集中しなければならない領域が目白押しである。3Dプリント市場は、立ち上がり期で魅力的だが、我々が参入するにはもう二年はかかるだろう。。

WTT: 何か他に仰りたいことは?

RK: 産業界の革新をみると、第一世代は垂直統合から始まる。1965年から85年くらいのIBMやDECを考えれば良い。彼らは全てのものを自分で作った。90年頃からITがメインストリームとなった。無数のプレイヤーに分かれて、お互いに競合し、協力し、ネットワークを作り、買い、売りを行わなければそうはならなかったし、そうすることによって、顧客に多大な価値をもたらすことができたのだ。同じことがWeb To Printとマスカスタマイゼーションについても起こると考える。Vistaprintのビジネスモデルであるフロントもバックも統合され我々が全て所有しているこれまでのスタイルは上手くいっていて、今後もそうありつづけるであろう。このブランドイメージを活かせば、Vistaprintのテンプレートソリューションを必要とする個人事業を対象としたビジネスモデルは、今後も大きく成長していく可能性を秘めている。しかしCimpressが将来さらに飛躍するには、別のことをしなくてはならない。開かれた生態系を提供し、前例の無い大量の注文が集まるプラットフォームを構築することが我々の新しい姿となろう。プラットフォーム上の注文は必ずしも我々の注文でなくてもいい。我々自身の従来の姿を解体して、ネットワーク生態系を運営し、多くのサプライヤーや再販業者に貢献してく存在にならなければ、我々はリーダーになれないだろう。このネットワークを基本とした生態系こそが、マスカスタマイゼーション戦略であって、Cimpressそのものなのだ。

 

 

  

whattheythinkmini
By Cary Sherburne
Published 2016年 1月3日
原文 http://whattheythink.com/articles/78403-cimpress-robert-keane-business-growth-strategy/

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