Fujifilm Inkjet drupa 2016 (WhatTheyThink?)

この章ではフジフィルムの再びデビューしたJ Press720S と540W、既存の商品、さらにはdrupaでの新しいテクノロジーの展示について見たい。

他の日本企業と同じくフジフィルムも非常に保守的で、マーケティングでどんちゃん騒ぎはあまりしない。結果として、印刷ソリューションの全体を見渡す際に見落としてしまうことがある。しかしながらフジフィルムは印刷、電子写真とインクジェットのプリントにおいて本物の巨人である。私の以前の文章において、フジフィルムの歴史とXeroxとの意義ある関係について述べた。

その際にフジフィルムのインクジェットビジネスを出現可能として戦略的な買収についても述べた。フジフィルムは最初の枚葉インクジェット機J Press720をdrupa2008で技術展示を行い、2011年から販売を開始している。drupa2012においては連続紙インクジェット機J Press540Wを技術展示し、2013年前半に発売している。

前回の文章からフジフィルムは極めて多忙で在り続けた。2013年11月にはハイデルベルグとのインクジェット機の共同開発を発表し、その努力が結実したのが直近のハイデルベルグPrimefire106の発表である。フジフィルムは、枚葉のプロダクションインクジェット機を逸早く、恐らく早すぎたタイミングで発表し、そこから市場の要求とそれに対する最適のソリューションをより学んでいる。そこからフジフィルムはJ Press720Sを2014年11月に静かに発売し、市場に認知され、顧客に受け入れられるべく努めてきた。それに加えて、drupa2016で行われる技術展示でハイライトを浴び、この機械がインクジェット市場で重要な位置を占めるミッションを持っていることが分かるであろう。


画像

J Press 720S、あるいはHeidelberg Primefire 106の非常に印象的な、写真に近い高品質な出力は、おもにフジフィルムDimatix SAMBATM G3L プリントヘッドによるものである。もしご覧になってなかったら、早く見るべきである。

The SAMBAは1200 dpiのピエゾ電子方式のDoD(ドロップオンデマンド)のプリントヘッドである。 Landaの印刷機はユニークなプロセスを経ているが、SAMBAのヘッドを利用している(参考記事)

そのMEMS(微小電気機械システム)の設計には多くのアドバンテージがあるが、中でも液滴の粒径を2.4から13.2ピコリットルの大きさに制御できる能力を活かして、VersaDropTMという、複数レベルのグレイスケールを制御できる事が重要である。もうひとつ重要なアドバンテージは、RediJet循環システムで、ノズルの中のインクを循環させ続けて、最少のインク廃棄で、プリントヘッドを最良の状態に保ち、信頼性を向上させる技術だ。よく似たCanonの“pre-fire”という技術を以前紹介している(参考記事)

この循環技術はインクを節約しながらノズルの口を開くだけではなく、潤湿材のレベルを落とすことができ、各種メディア上での乾燥を速くする効果がある。しかしながらそれでも枚葉機で利用される広範囲の各種メディアへの対応は十分ではない。この理由からフジフィルムもキヤノンもその他の枚葉インクジェット機メーカーも、プリマー(事前塗布)のソリューションを準備している。SAMBA G3Lプリントヘッドは1ヘッドに2048のノズルでプリント幅1.7インチ=4.3cmを実現している。ユニークな平行四辺形に組まれたSAMBAのノズルは、プリントヘッドを広く整列させる際のステッチングを単純にするように設計されており、その結果プリントバーの幅は非常に狭くなっている。これによって、このバーを利用するOEMメーカーのデザインの自由度は高くなっている。現在のベンダーは水性インクを使っているが、ヘッド自体はUVインク、溶剤、ラテックスインクを利用可能で、アプリケーションの幅は広い。


インク

前回述べたように、フジフィルムは、インクのAvecia社とSericol社を買収し、インクジェット機のビジネス参入に備えた。その結果の一つとして、SAMBAを含むDimatixヘッド用に、Vividia顔料インクを開発し、高い品質、広いカラーガマットとよいメディアへの接着を実現している。


J Press 720S

In conjunction with the J Press 720S B2枚葉機を発表した際に、フジフィルムは設置されていた市場の全てのJ Press720に大規模なアップグレードを行った。この新しいモデルは市場に嵐を巻き起こした。12か月前の発表以来、フジフィルムは70台を設置し、依然発注を受け続けている。J Press 720Sの設計は、イメージングを除けば、下記ビデオで見るようにオフセットの枚葉機と同等である。

 

Video Provided by Fujifilm

JPress 720SはB2(20.9 x 29.6)機で時間あたり最大2700シート、解像度は1200 x 1200dpiで4段階のグレイスケールをサポートしている。コート紙 (マット、シルク、グロス)と非コート紙に印刷が可能である。 メディアの厚さは84gsm–300gsmに対応している。本体には17のSAMBAヘッドからなるCMYKのプリントバーの手前に、アニロックスローラーで印刷事前塗布を行うRapid Coagulation Priming(高速乾燥プリマー)ステーションが装備されている。これによって非常にシャープなドットとラインが引け、幅広い種類のメディアにコントラストの強い印刷が可能となる。The press includes anさらにILS (inline sheet scanner=インラインシートスキャナー)を装備し、問題を検知すると自動的に修正に次ページから補正される。乾燥はシート幅いっぱいに赤外線とホットエアナイフで最適化されている。さらに紙をデリバリーの手前でファンで冷却するステーションがある。これによってシートを安定させ、乾燥の効率を向上している。


Version 2 Improvements改善V2

JPress 720の最初のバージョンと比べると、数多くの品質、生産性と信頼性への改善が行われた。品質を改善するために、フジフィルムは射出の順序とプリントヘッドモジュールの設計を変更し、プリントバー全体を取り出さなくても個々のヘッドを交換できるようにした。

さらに印刷ドラムに変更を加え紙送りの性能改善、吸い出し穴による湿気を帯びた紙の変形防止、吸い出しの制御の改善を行った。紙の高さの安全検知も改善した。これは枚葉のインクジェット機では極めて重要である。

当初の機械にはなかったバリアブルデータのスキャン二ング機能を装備し、印刷領域外にバーコードを印刷し各シートを認識し、表裏の整合性の確認がとれるようになった。裏面を印刷する前の紙を反転する際に、たとえ交じってしまったとしても整合性が取れる。バリアブルデータの印刷をフルスピードで行うための強力なデータサーバーも導入した。

2016年の4月、J Press 720Sはプロダクションインクジェット機としては初めてIdealliance® のデジタル印刷システム認証を受けGRACoL 2013のスペックを満たすこととなった。 テストでは1000枚の印刷で安定してスペックを満たし、翌日も同じ結果を出している。


J Press 540W

既にご紹介したようにフジフィルムはdrupa2012で連続紙のインクジェット技術を発表している。これがJ Press 540Wとなり、2013年に発売されている。この20.5インチの連続紙両面印刷機(シングルタワー)は、21.6ft x 8.9ft(6.6m x 2.7m)の小設置面積で、最大328 fpm (100 m/min)で両面を600 x 600 dpiの解像度で印刷し、解像度を600 x 480 dpiに落とすと417 fpm (127m/min)で印刷が可能となる。

J Press 540Wの本体はロールトゥロールであるが、シートカッター、他のサードパーティーの後加工機の装着が可能である。


新しいテクノロジー

同社のdrupaで新技術の展示を行うという歴史は今回も変わらない。フジフィルムは新しい20インチの連続紙で1200dpiでさらに印刷品質を上げ、スピードも速くなったインクジェット機を展示する。さらに自動化が進んだフロントエンドの展示も検討中だ。


フジフィルムXMFワークフロー

印刷機はそれぞれのコントローラーを持ち、印刷機の機能を制御し、オペレーター向けのタッチスクリーンとして提供される。Windowsベースでユーザーの要望にスケーラブルに応える事ができる。

ファイルを準備し、データを印刷機に投げるのはフジフィルムのワークフローXMFである。このワークフローはその核にAdobe PDF Print Engine (APPE)を備えている。J Press 720SとJ Press 540Wをサポートするのに加えて、工場全体のワークフローソリューションとして設計されている。このJDFベースのシステムはビジネス上、そして複数台の印刷機を有する工場の生産に必要な機能を多く備えている。


結論

プロダクションインクジェットの技術を、いつ他のアプリケーションが必要とするコストと品質を満たすのだろうかと見守ってきた。新しい印刷技術が目指す、最高の品質ターゲットの一つが、オフセット印刷が基準を造ったフォトブックであろう。最初はIndigoが目指し、現在そのマーケットを押さえている。徐々に多くの電子写真印刷機がそのレベルに追い付き参入を果たしている。J Press 720Sによって、インクジェット枚葉機がそのレベルに到達したことに疑いはない。そのことがJ Press 720Sがフォトブック市場をターゲットにしている、という意味ではない。事実、私が話した印刷会社はIndigoやiGen、さらにはオフセット印刷機の高品質の仕事を、この機械で置き換えている。

過去に見てきたように、フジフィルムはただ座っているだけではない。単に新しい技術を開発するだけではなく、印刷技術の開発という面で業界をリードし続けている。

 

 

  

whattheythinkmini
By David Zwang
Published 2016年5月12日
原文 http://whattheythink.com/articles/80357-inkjet-drupa-2016-continuing-story-fujifilm/

関連記事

ログイン

ピックアップ記事

  1. 全世界の印刷、パッケージ関係者が会うと、大抵こんな話になる: 「今まで何回drupaに参加しまし...
  2. 2023年は記録上最も熱い夏となったが、2024年はさらに暑くなりそうだ。
  3. デジタル印刷はワークフローを進化させる。
  4. 印刷工程の自動化とデジタル化は必須である。
  5. 段ボール業界におけるデジタル印刷の変革は、何年もの間、実現することを待ち望んでいました。
  6. Xeroxがdrupa 2024の出展を取りやめるとのニュースを受け、欧州担当編集者のRalf Sc...
  7. Keypoint Intelligenceは、企業のダイレクトマーケティング活動が、時代とともに...
  8. 2.デジタル後加工(加飾)と軟包装デジタル分野の潮流としては、先述の他に新たな業容拡大の方向性が...