Kodak Inkjet drupa 2016 エンタプライズインクジェットシステムの現状と今後(WhatTheyThink?)

この記事では、Kodakエンタプライズインクジェットシステム事業(以下インクジェット事業部)、Stream技術・ULTRASTREAM技術、PROSPERシリーズ、そして将来の技術について取り上げていく。

4年前、drupaが開催されたときに、私はKodakの歴史とVERSAMERKやPROSPERなど幅広い製品ラインについて紹介した。(first article) その後2012年に、同社は連邦破産法11条を適用したのである。同社が2013年に破産から再建された時、当時の会長兼CEOであったAntonio M. Perez氏はこう発言した。「我々は、パッケージ、印刷、グラフィックコミュニケーション、プロフェショナルサービスなどビジネスの市場のイメージングテクノロジーカンパニーとして進化した」。にもかかわらず、2016年の3月15日に報じられた、Kodakがインクジェット事業部を売却交渉中とのニュースを読めば、誰でも困惑するであろう。私なりにこのニュースの解釈を述べたい。

http://whattheythink.com/news/79435-kodak-spin-prosper-inkjet-business/ (英文)

ただ、それより重要なのが、インクジェット事業部の最新動向と彼らがどこへ向かっているのかについて述べることだ。3月末に、アナリシストのグループに混ざって私は、オハイオ州のデイトンに所在するインクジェット事業部部を訪問する機会があった。倒産や再編で事業が縮小され、音沙汰がない中、同事業部がdrupa 2016に向けてどのような準備を行っているかを探るためである。結論から言うと、そこで見たものに、私は感銘を受けたのだ。邪魔となる経営的なゴタゴタをはやく片づけて、ここで開発されているものをもっと世に送り出してほしいと思ったほどである。

インクジェット事業部はPROSPERプレス向け以外にいくつかの会社にコンティニュアス・インクジェット(CIJ)技術をOEMで提供している。Timsonの新聞印刷機や、Bobstのパッケージ印刷機の新シリーズ、ダンボールライナー、紙器、軟包装印刷機がある。現時点では発表されていない建材や機能印刷の分野でひそかに進めているものもあるという。OEM向けのULTRASTREAM技術は、プリントバーの幅を8インチから最大97インチまで拡大することができるので、産業用資材、プリンテッドエレクトロニクス、バイオメディカル、3Dプリンティングなど多彩なアプリケーションが想定される。


Kodakのコンティニュアス・インクジェット(CIJ)・イメージング

Kodakは、ピエゾエレクトリックインクジェット技術を採用したVERSAMARKを今後も提供し続けるが、インクジェット事業部の現状の課題と、その将来はStream CIJ技術にあるといえよう。

インクジェット事業部とPROSPER技術の中核にあるのがCIJプリントヘッド技術だ。おさらいになってしまうが、インクジェット技術を大きく分けると、ドロップ・オン・デマンド(DOD)とコンティニュアス・インクジェット(CIJ)の二つとなる。さらにDODの方を分けると、サーマルとピエゾの2つ。サーマルプリントヘッドでは、小さなヒータが薄いインク膜を気化させ、気泡となったインクをピストンのようにノズルへと押し通す。気泡も同じくサイクルごとに放出される。一方、ピエゾプリントヘッドでは、ノズルの裏側にあるインクが入ったチェンバーに加熱体の代わりにピエゾエレクトリック体があって、電圧を加えると、ピエゾエレクトリック結晶が振動し、液体に圧力をつくり、インクの液滴をノズルから噴射する。ピエゾインクジェットは、耐熱性・不揮発性でなくてはならないサーマルインクジェットと比べて、UVインキなど幅広いインクの種類を使用することが可能だが、ピエゾエレクトリック変換器を使うため、ヘッドの製造コストが、サーマルに比べて高い。

コンティニュアス・インクジェットはDoDと異なるアプローチを取る。DoDと違って、水滴を生成する際始まりと終わりがない。DoDではプリントヘッドが断続的に高い圧力をかけ、インクの流れがノズルを通じることにより、ノズルの根詰まりを防いでいるのに対して、CIJはインクの表面を熱で暖めノズルから流れ出る際、ノズルが振動を起こし、表面張力に変化を及ぼすことにより、インクの流れを妨げ細く、最終的に液滴となって落ちていく。水滴の大きさは、流れの速度とパルス間の時間に比例し、簡単に制御することが可能。未使用のインク液滴は、循環され、再利用される。
DoD and CIJ DoDとCIJの違いは以下のビデオで見ることができる。

 

 

CIJは噴射するインクに対する化学的制約が少ないため、想定されるアプリケーションは、商業印刷だけに限ったことではない。ヘッドを定期的にクリーニングすれば、何百・何千時間も安定した印刷ができる。ヘッドのクリーニングができなければ、Kodakに返送して再生することが可能だ。同社は、現在2種類のコンティニュアス・インクジェットプリントヘッドを提供している。Stream技術と、最近発表されたULTRASTREAM技術である。これまで全てのPROSPERはStream技術を使ってきた。


Stream技術

前述したとおり、Streamプリントヘッドは、連続的に液滴を生成し、空気の流れを使って、使用されない液滴を再利用へと誘導する。StreamプリントヘッドのSシリーズ(追い刷り用)で印刷できるのは、1000fmp=300mで600 X 600dpi。KodakのPROSPERプレス印刷機としては、最高速1,000fpmで600×900と600×600の解像度が可能で、同社は画質としては175線相当としている。


ULTRASTREAM 技術

ULTRASTREAMは4世代目となる高解像度CIJ技術だ。長い間、インクジェット事業部のラボで、重要技術として開発されてきた。Streamと違って、ULTRASTREAMは空気の流れを使って利用しない液滴を誘導しない。荷電用の電極で、荷電された液滴を生成し、非荷電の液滴と分別するのだ。荷電された液滴は誘引されて再利用にまわされ、非荷電の液滴は、そのまま基材に着弾されていく。Kodakによると一秒間あたり1ノズルから40万の液滴が投下されるという。これは、最も速いDoDより3倍の速度だ。

kodak-stream-versus-iltrastream
 

ULTRASTREAMプリントヘッドは、現在500fpm=150m/分で600x1800dpiを印刷することができる。使うことができる紙やプラスチックの基材は幅広い。ヘッドの配置を走査型にすることにより、稼動台に設置された複数のヘッドで、広幅のウェブ印刷での部分的な追い刷りが可能だ。Kodakは枚葉機にもこの技術は適していると考えている。

Kodakは、ULTRASTREAMプリントヘッドの寿命は、約2000時間だという。DoDと比較すると、コストは同等あるいは以下、解像度と生産性は高い。前述したとおり、他のインクジェットヘッドと違ってCIJのプリントヘッドは使い捨てではない。新しいプリントヘッドの半分のコストで再生されるのだ。
私が見たテスト環境から出力されていた印刷サンプルは素晴らしく、それをdrupa2016でご覧に入れることを期待していただきたい。OEMキットは2017年後半に提供開始され、最初のOEMは2019年に出荷される予定だ。


インク

時に我々は、Kodakの生い立ちが化学会社であることを忘れてしまう。同社にとって、CIJ用に様々なアプリケーションに向けたインクの組成を開発することはお手の物。それぞれのメーカーとOEM関係を継続するときに、それぞれの要件に見合った条件を満たさないといけない。Kodakはプリントヘッドと材料の両方で支援できる理想的なパートナーといえるだろう。

特許を取得しているインクは、Streamインクジェット技術用として特別に開発されている。製造は、ミクロメディア粉砕技術を使う。平均10~60nmほどのナノ分子は、ピグメントベースで、イメージの定着、耐水性、信頼性を高めるため、重合分散剤を含んでいる。インクの色域は非常に広い。コート紙に印刷したときに175ラインオフセットと比較すると35%広いとのことのようだ。水性のインクで、現時点では顔料インクを提供している。

CIJのプロセスの特徴として、ノズルが常に湿っているため、印刷を行っていない間の空噴射を必要としない。また湿潤剤の使用を減量できることもメリットだ。湿潤剤は、ノズル内部でインキが乾燥するのを抑制するのだが、紙にのったときに乾燥しづらくしてしまう副作用が生じる。インクの湿潤剤の含有量を少なくすることにより、インクのコストを下げることができる上に、光沢紙でも乾燥を早めることができるのだ。


XGV (拡張色域とニス)

KodakのXGVハイブリッドシステムは、PROSPER S10プリントシステムを使った技術。500fpmでパッケージングアプリケーションの紙や軟包装フィルムに印刷できる。水性のインクジェットでCMYKOGV拡張色域は、インクを変えずに98%のブランドカラーに合わせることが可能だ。食品への二次接触の規制にも準拠。どのKodakのインクもそうだが、光退色抵抗性に優れている。

システムは、スピードを落とさずにグラビア又はフレクソ印刷機にインライン、又は、ニアラインで組み込むことができるが、スタンドアローンシステムも可能だ。drupa 2016のKodakのブースで、XGVシステムが稼動しているのをご覧に入れることができるであろう。


製品

以前、私はKodak PROSPERプレスシリーズについて取り上げた。(Kodak PROSPER line of presses)PROSPER 6000Cは商業印刷のカタログなどカバレージが多いアプリケーション向けだ。PROSPER 6000Pカバレージが少ない新聞用紙などをつかった出版系のアプリケーション向け。そしてPROSPER1000 Plusは、世界最速のモノクロインクジェットプレスといわれている。

PROSPERSシリーズは1300以上のシステムがフレキソ、グラビア、オフセット各種に印刷機に設置されている。また折り機、その他後加工機でのヴァリアブルプリントの追い刷りを行っている。

PROSPER イメージ最適化ステーション(IOS)は、インラインとオフライン型がある。プライマーを全面塗布することにより、メディアの選択肢を増やし、イメージ画質を損なわずスピードを上げることを可能とした。


DFE

PROSPERシリーズのStreamとULTRASTREAMインクジェットヘッド両方を駆動するのは、スケーラブルなKodak 700プリントマネージャーDFEだ。700は、AFP、IPDS、IJPDS,PDF、PS、PPML、VPSなど必要な様々なフォーマットを受け入れ、JDF・JMFの制御及びコミュニケーションもサポートする。現在、より効率よいPDF並行処理ができるだけではなくより良い速いPDF/VTをサポートするAdobeAPPE3xを含んでいる。


まとめ

このような将来性のある素晴らしい技術を何故Kodakは売却しようとしているのだろうか。私の解釈はこうだ。Kodakは会社更生の渦中にある。同社に資金を提供しているのは、 Blackstone グループの子会社であるGSOキャピタルパートナー、 BlueMountain キャピタルマネージメント、 George Karfunkel、United Equities Commodities カンパニー、 Contrarian キャピタルなど投資会社で、会社の経営方針にかなりの影響力を持つ。ご存知の通り、投資会社は短期的な利益を追求する。往々として利益性が見えにくい発展途上にある技術と相反することが多い。矛盾する目標、そして、ポテンシャルに対しての理解の無さ。これらが、インクジェット事業部が戦略的パートナーと新しい住処を探そうとする所以といえよう。要は、KodakのStreamやULTRASTREAM技術の価値を十分に理解してくれる会社と一緒となって、短期的な利益をつくりだし、長期的なROIを確保しようとしているのだ。

インクジェット事業部は1970年台にMeadデジタルシステムとして産声を上げたが、その後Diconix、Kodak、Scitex、再びKodakとブランドを様々に変えながら、技術革新をし、今後も素晴らしい技術を販売し、ライセンス提供を行い続けるであろう。

 

 

  

  

whattheythinkmini
By David Zwang
Published 2016年4月26日
原文 http://whattheythink.com/articles/80086-kodak-enterprise-inkjet-systems-ultrastream-production-inkjet/
翻訳協力 Mitchell Shinozaki

 

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